東京湾岸エリア、江東区豊洲地区と中央区晴海地区の間を流れる晴海運河に赤錆びた鉄道廃線鉄橋が残されています。かつて工業・港湾物流地帯だった晴海・豊洲地区を走った臨港貨物鉄道・東京都港湾局専用線の遺構、「晴海橋梁」と申します。都心に眠る鉄道廃線跡としてつとに知られた鉄橋遺構、その夜の姿です。撮影は2018年(平成30年)4月、鉄橋周辺の晴海運河沿岸はすっかり新しい街の姿となり、残った区画でも再開発の最終局面のように高層ビル建設が進んでいた頃でした。
晴海橋梁 夜空の眺望
晴海運河の江東区豊洲側、春海橋公園より。新しい幾棟もの高層ビルが聳える夜空の下、煌めく街灯りの傍らに取り残された古鉄橋・晴海橋梁。ところで晴海橋梁がその一部だった東京都港湾局専用線とはかつて豊洲埠頭、晴海埠頭をはじめ港区芝浦埠頭・日の出埠頭等、東京港各地に敷設されていた東京都港湾局運営の臨港貨物鉄道で、最盛期の1965年(昭和40年)頃には線路総延長約24kmにおよび高度経済成長期の東京の物流の一翼を担いましたが、やがてモータリゼーション(車社会化)の進展に伴うトラック輸送への転換や国鉄の貨物輸送方式の変革(ヤード方式→コンテナ化)等により輸送量は年々減少、1980年代後半には次々に路線が廃止され最後まで残った晴海線が1989年(平成元年)に廃止、東京都港湾局専用線は全廃となりました。この「晴海橋梁」はその最後まで残った晴海線の一部でした。1957年(昭和32年)11月26日竣工、1989年2月10日晴海線廃止に伴い本橋梁も廃止。しかし廃止後も撤去されずに赤錆びた姿のまま残されていたのです。
晴海橋梁 晴海より
中央区晴海二丁目側より。運河沿いの更地の先に見える晴海橋梁。街灯りに照らされた赤錆び具合い。
晴海橋梁と晴海運河の船の光跡
このアングルからは晴海運河の水面が見えませんが時折通る屋形船の光跡をいれるとそこに運河があるのをイメージして頂けますかと。
晴海橋梁南側
晴海橋梁の南側、晴海運河下流方面。奥は江東区豊洲中心街。建設工事中のクレーンが見えるあたりに豊洲駅(東京メトロ有楽町線・新交通ゆりかもめ)があります。手前はかつて生コン工場があった敷地です。撮影当時、コンクリート防潮壁の向こうは更地でした。
晴海橋梁と豊洲の街の灯
晴海運河に架かる春海橋より晴海橋梁全景。高層ビル群が輝く豊洲中心街を背景に。
晴海橋梁と新しい街の光
いかにも新しいマンション群を背景にした古い赤錆び鉄橋。
晴海橋梁夜景 鉄橋部分
真っ暗な夜の運河と晴海橋梁アーチ鉄橋部分。ちなみに鉄橋部分は全長58.8mとの事。20m級電車3輌分に近い長さ。
晴海橋梁と晴海の夜空
春海橋より晴海方向。晴海橋梁全景と周辺の夜景眺望。撮影当時は晴海二丁目でタワマン建設工事中、タワマンの手前は更地。左手奥に晴海大橋(有明通り・首都高晴海線)、この方向が晴海運河の流路になります。晴海地区の晴海運河沿岸がかつての晴海埠頭で東京都港湾局専用線・晴海線はかつて港湾物流地帯だったこの地区の貨物輸送を担っていたわけです。往時にこの線路を走っていたのは国鉄DD13形と良く似たタイプの青い凸型ディーゼル機関車牽引の貨物列車で、その輸送貨物は新聞巻紙(新聞用紙)・セメント・輸入小麦大豆等が主なものだったようです。貨物線は晴海地区・豊洲地区を経て更に東へ延び、越中島貨物駅(江東区塩浜)で国鉄越中島支線(総武本線貨物支線)と連絡していました。そこから更に各地へと輸送されていったのです。
晴海橋梁と晴海の高層ビル群夜景
古い赤錆びた鉄橋と晴海地区中心街の高層ビル群夜景。右手の高い三棟は晴海トリトンスクエア(晴海一丁目)。
晴海橋梁と豊洲六丁目の街灯り
春海橋に平行する晴海橋梁アーチ鉄橋部分を真横から。錆びた鉄橋の彼方は主に豊洲六丁目地区、中央部付近が新交通ゆりかもめ・新豊洲駅前周辺です。
晴海橋梁コンクリート部分 其の一
晴海橋梁の晴海側コンクリート部分。晴海側沿岸部の更地は先述・生コン工場跡地。
晴海橋梁コンクリート部分 其の二
コンクリート部分の晴海側接地部付近は随分植生繁茂した状態。
晴海橋梁コンクリート部分と晴海運河夜景
線路上は雑草だらけのコンクリート橋梁部分と豊洲の街の灯を映ずる晴海運河。
晴海橋梁コンクリート部分と豊洲の街
豊洲中心街を背景にしたコンクリート橋梁部分。遠景の煌めく新しい街と線路上の小柄ながら逞しい木々。
晴海橋梁夜景 春海橋公園より
江東区豊洲・春海橋公園より。このアングルからだと強い照明の影響でシルエットのような感じ。
晴海橋梁下の船灯り
晴海橋梁下を通過して行く屋形船の光跡。
晴海橋梁と晴海通りの光
平行する春海橋・晴海通りの街路灯に照らされて一寸華やか。
晴海橋梁と彼方に灯る東京タワー 其の一
晴海橋梁・アーチ鉄橋と彼方に灯る東京タワー(港区芝公園四丁目)。晴海橋梁から東京タワーまで直線距離で真西に約4km。
晴海橋梁と彼方に灯る東京タワー 其の二
晴海橋梁は昭和32年竣工、東京タワーは昭和33年竣工、実は同世代の鉄骨建造物。手入れされているかいないかでえらい違い。こっちは線路上に木まで生えてますから。ちなみに晴海橋梁と東京タワーはほぼ同緯度上の建造物でもあります(共に北緯35.658度付近、東京タワーの方が極微妙に北)。
晴海橋梁と晴海の街の灯
春海橋公園より晴海橋梁全景と晴海運河、晴海地区の街。周辺には工業・物流地帯だった頃の面影はすっかり少なくなり、かつての晴海豊洲の語り部のような老鉄橋の姿。
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